ADHDは就職や転職ができない?理由や就職する方法を解説

ADHDは就職や転職ができない?理由や就職する方法を解説

ADHDは転職・就職できない、不利と考えている人は多いです。

実際、ADHDでは就職が難しい仕事があるのも事実ですが、逆にADHDだからこそできる仕事もあるとされています。

今回はそんなADHDの就職事情を紹介しつつ、就職できない理由や対策などを解説していきます。

ADHDは就職や転職ができない?

結論から言うと、ADHDであっても就職や転職をすることは可能です。

ただし、日本では未だに発達障害の一種であるADHDに対する理解が低いため、業種によっては手帳があると就職で大幅に不利になってしまうケースがあるのも事実です。

また、仮にADHDであることを隠して就職をできても、自身の症状のせいで短期離職に繋がるケースもあり、まだまだADHDの方と健常者が平等に働ける環境は整っていません。

ADHDの「不注意」「多動性」「衝動性」の3症状を解説

ADHDは「注意欠陥多動性障害」と言われる発達障害のひとつです。

ADHDには、下記の3つの症状があります。

  1. 不注意
    「集中力がない」「仕事でうっかりミスをする」「気が散りやすい」「忘れ物が多い」「時間管理ができない」といった、不注意の症状
  2. 多動性
    「そわそわと落ち着きがない」「じっとしていられない」「貧乏ゆすりをする」といった、多動性の症状
  3. 衝動性
    「順番を待てない」「思ったことをすぐ口にしてしまう」「考える前に行動してしまう」「衝動買いをしてしまう」といった、衝動性の症状

不注意・多動性・衝動性のうち、どの症状が強く出るかは、人によってさまざまです。

① 不注意優勢型のADHD

不注意の症状が強く現れ、多動性や衝動性の症状があまり見られないのが、「不注意優勢型」のADHDです。

不注意優勢型の人がADHDであることに無自覚のまま働いていると、職場で次のようなトラブルを起こし、転職を余儀なくされてしまうことがあります。

  • 仕事でミスばかりする
  • 仕事で使う書類をどこかに置き忘れてしまう
  • 時間管理ができずに仕事が滞ってしまう
  • 任された仕事を納期に間に合わせることができない

② 多動性・衝動性優勢型のADHD

多動性と衝動性の症状が強く現れ、不注意の症状が見られないのが、「多動性・衝動性優勢型」のADHDです。

多動性・衝動性優勢型の人がADHDであることに無自覚のまま働いていると、職場で次のようなトラブルを起こし、転職を余儀なくされてしまうことがあります。

  • 落ち着いて仕事ができない
  • デスクにずっと座っていられない
  • 考えなしに行動して仕事で失敗する
  • 会社のルールが守れない
  • 会議中にNG発言をしてしまう
  • チームで動けず、独断で仕事を進めてしまう

③ 混合型

不注意・多動性・衝動性の症状すべてが現れるのが、「混合型」のADHDです。

混合型の場合は、①や②よりも多くの症状が現れるため、転職に追い込まれる可能性も高いといえます。

ADHDの就職・転職をする際のデメリットや注意点

理解を得られず転職を繰り返してしまう

ADHDの人が、自分では無自覚のうちに仕事を続けていると、周囲からの理解が得られないために転職を繰り返してしまうことがあります。

上司から何度も叱責されたりして、鬱の症状が出てしまったり、アルコール中毒やギャンブル中毒に陥ってしまうケースもあります。

そのようなことにならないためには、自分自身のADHDの症状をはっきりと自覚し、その特性を活かせる仕事に転職をする必要があります。

ADHDという診断を受けてない人は必ず診察を受ける

もしも「自分はADHDかもしれない」と思う人は、まず専門のクリニックで診察を受け、ドクターのアドバイスを受けましょう。

診察の結果、薬を服用する場合もありますし、カウンセリングを受ける場合もあります。

今まで「自分には仕事の能力がない」「人間関係が築けない」と思い込んでいたことが、実はADHDの症状だったと気づくことで、ずっと背負ってきた心の重荷を降ろすことができる人も大勢います。

ADHDの就職は長所を活かすことが重要

ADHDの症状を持つ人の中には、自分がADHDであることを自覚してその症状に合った職業に転職することで、大きく飛躍できる人も少なくありません。

“ADHDは病気”という認識があるため、つい欠点ばかりに目がいきがちですが、実はADHDの人には他の人にはない素晴らしい長所もあるのです。

行動力があり、エネルギッシュ

ADHDの人は行動的でエネルギッシュな人が多く、その特性を活かせる仕事に転職できれば、思わぬ成果を挙げることができます。

好奇心が旺盛で、チャレンジ精神がある

ADHDの人は好奇心が旺盛な人が多く、チャレンジ精神にも富んでいます。

そのため、新しい情報を目ざとくキャッチし、物知りでもあります。

その個性を活かせる仕事に転職できれば、水を得た魚のように能力を発揮できるでしょう。

感性が豊かで、発想力に富んでいる

ADHDの人は感性が豊かで、発想力に富んでいる人が多く、クリエイティブな仕事に転職すると能力を思う存分発揮できる場合もあります。

Webデザイナーなどはコミュニケーション能力よりも感性の鋭さや斬新なアイデアなどが評価されるため、ADHDの人が活躍できる可能性は高いといえます。

興味があることに関しては、集中力を発揮する

「集中力がない」というADHDの欠点は、裏を返すと「興味があることに関しては、すごい集中力を発揮する」という長所につながっています。

転職をした会社の仕事が、自分の興味関心のある仕事だった場合は、他の人が真似できないほどの集中力を発揮することもあるでしょう。

このように、ADHDの人は他の人にはない長所を持っています。

豊かな感性や発想力といった部分は、得てして生真面目な日本人には苦手な部分でもあり、その能力を持つ人を求めている企業も少なからずあります。

「今まで上司に怒られてばかりいた」「仕事で失敗が多く、どうしてできないのだろうと自分を責めていた」といった悩みを抱えていた人も、自分の特性を活かした仕事に転職できれば、霧が晴れたように充実した人生を送ることができるでしょう。

そういう意味で、ADHDの人がどの職業に転職するかというのは、人生を左右するほどの大きな選択になります。

ADHDであることを就職先に告げるべき?

ADHDを伝えるかはケースによる

ADHDが就職・転職する際によく悩むのが、「ADHDであることを告げるべきか否か?」ということです。

結論を言うと、就業先やADHDの度合い、障害者雇用枠での採用を狙うかなどで変わってきます。

法律的には自分がADHDであることを会社や転職エージェントに報告する義務はありません。

たとえ障害者手帳を持っていたとしても、障害者雇用で入るのでなければ秘密にしても一向に問題はないのです。

ADHDで迷惑をかけないなら黙っているのもあり

ただし、問題になるのは転職後です。

もし自分のADHDが就業後に迷惑をかける類のものでなければ、黙っていた方が無難に馴染める可能性が高いです。

ADHDといっても軽度で、健常者とほとんど変わらない場合も黙っていて良いでしょう。

ただしADHDであることを会社の人はまったく知らないわけですから、当然ながらADHDであることへの配慮はまったくないと思っておきましょう。

発覚のリスクがある場合は最初に告げるのもあり

自分の適職と思える仕事に転職できても、ADHDとしか思えない振る舞いをして「何かおかしい」と思われることがあります。

もしADHDを隠して入社したことが発覚すれば、間違いなく会社にいづらくなってしまうでしょう。

その場合は最初にADHDであることを告げて、理解ある会社で配慮を受けつつ適正のある仕事をやっていくのも一つの働き方です。

このように転職の際に自分がADHDであることを告げるかどうかは、非常にナイーブな問題です。

障害の程度なども考慮して、慎重に判断する必要があるでしょう。

ADHDの就職・転職におすすめの職業

ADHDの人が転職を考える場合、年代によっても選択肢は変わってきます。

転職を考えるADHDの人の多くが未経験からの転職となるため、年代によって「今からでもスタートできるかどうか?」という問題が出てくるためです。

20代や30代前半のADHDはIT企業がおすすめ

たとえば20代~30代前半の人が転職を考える場合は、ある程度広い選択肢の中から職種を探すことができます。

たとえばWeb系企業のクリエイターなどは、いま人材不足で悩んでいる企業も多く、ギリギリ30代前半までであれば未経験でも転職できる可能性があります。

30代後半から転職を考えるADHDの人は、未経験からの転職を受け入れてくれる企業・団体がグッと少なくなるため、適正に応じて下記のような職業がおすすめです。

感性が豊か・発想力がある人

デザイナーやアーティストなどの、クリエイティブな仕事。

  • Webデザイナー
  • カメラマン
  • ライター
  • イラストレーター
  • インテリアデザイナー
  • 漫画家
  • ミュージシャン
  • 画家
  • 俳優・声優
  • 書道家
  • メイクアップアーティスト
  • スタイリスト
  • 美容師

好奇心が旺盛・行動力がある人

編集者やディレクターなどメディア関連の仕事、営業の仕事。

  • 雑誌やWebメディアの編集者・ディレクター
  • テレビやラジオのディレクター・番組の企画担当者
  • 新聞記者
  • 営業職

興味があることに集中力を発揮する人

研究職やものづくりに関わる仕事。

  • 研究者
  • 学者
  • Webエンジニア
  • ITエンジニア
  • ゲームエンジニア
  • 建築士
  • 自動車整備士
  • 調理師

上記の職業を見ると、ミュージシャンや俳優のように実現が難しい職業もあれば、Webデザイナーや自動車整備士のように比較的実現しやすい職業もあります。

とにかく早く就職したい人

「できるだけ早く転職したい」「地道に長く続けられる仕事に転職したい」と考えるなら、下記のような職業は現実的な選択肢といえます。

  • Webデザイナー
  • Webエンジニア
  • ITエンジニア
  • 調理師
  • 自動車整備士
  • 美容師
  • 営業職

このうち、調理師・自動車整備士・美容師に関しては、国家資格が必要です。

働きながら資格を取得する方法もありますが、その辺も協力者に相談しながら進めていくのがベストです。

【体験談】ADHDで転職に成功したAさんの事例

緻密な仕事でミスを連発し、転職を考えたAさん

28歳の男性・Aさんは、大学を卒業後マーケティングの会社に就職し、調査・集計などの仕事をしていました。

ところが、Aさんは緻密な作業や人とのコミュニケーションが苦手だったので、データの集計をさせれば間違いだらけ。

打ち合わせではNG発言をしてしまうなど、ミスを連発しては上司に叱られてばかりいました。

「この仕事は自分には合わない」と思い悩んだAさんは、ある日心療内科を受診し、自分がADHDであることを知りました。

そして、「もう苦手なことを仕事にはしない。自分の特性を活かせる転職先を見つけよう」と決めました。

勤めていた会社を退職したAさんは、転職エージェントに相談し、これまでの辛かったことや悩んだこと、どこに転職したら良いのか途方に暮れていることなど、思いのたけを伝えました。

するとキャリアコンサルタントは、「Webデザイナーの仕事はどうでしょうか?」とアドバイスをしてくれました。

ADHDに理解のあるWeb制作会社に転職し、好奇心が全開に!

Aさんはすぐに、「未経験でも仕事に就けるなら、ぜひWebデザイナーの会社に転職したい」と答えました。

これまでデザインの勉強をしたことがなかったAさんですが、美的センスが非常に高く、斬新な発想力を持っていたため、「これなら自分でもやれるかもしれない」と思ったのです。

紹介してもらったのはADHDに理解のあるWeb制作会社だったため、Aさんは無事転職に成功。

早速働き始めたところ、みるみるうちに頭角を現し、Aさんご指名で仕事の依頼が来るほどまでに成長しました。

「会社で叱られてばかりいたあの頃の自分は、いったい何だったのだろう?」と、昔を振り返るAさん。

自分にピッタリの仕事に転職できたことで、ADHDの特性である“旺盛な好奇心”を全開にして、日々生き生きと仕事に取り組んでいます。

ADHDが就職・転職を成功させる方法

転職サイトに登録する

自分がADHDであることがわかり、どんなタイプの症状が出ているのかを把握した後は、まずは転職サイトに登録して求人を探しましょう。

ハローワークで探すのも手ですが、転職サイトを利用することでより自分に合った転職先を見つけることができます。

転職サイトによってはADHD、障がい者採用の求人が出ているので、応募すれば高確率で就職に成功するでしょう。

大手転職エージェントに登録する方法もある

ADHDの方は大手の転職エージェントに登録するのもおすすめです。

ADHDの症状は人によってさまざまで、ほぼ健常に近い人もいるでしょうし、障害者手帳を持っていて、障害者枠での転職を考えている人もいるかと思います。

そのため、障害者雇用ではなく一般募集で転職を考える人は、「リクルートエージェント」や「DODA」「マイナビエージェント」といった大手転職エージェント数社に登録して、自分の特性に合った企業を選んで応募してみる方法もあります。

何人かのキャリアコンサルタントと話しているうちに、誰が一番自分と相性が良く、親身になって対応してくれるかがわかってきます。

親身になってくれるキャリアコンサルタントを見つけたら、適性検査を受けたり面接対策をお願いするなど、その人にしっかりと付いて着実に転職活動を行いましょう。

障害者の雇用が得意な転職エージェントに登録する

障害者手帳を持ち、障害者雇用での転職を考えている人は「DODAチャレンジ」や「at GP転職」のように、障害者の雇用に特化した転職エージェントに登録することをお勧めします。

ほぼ健常に近いADHDの転職者でも、あえて障害者雇用での転職を考え、障害者専門のエージェントに登録する人もいます。

その方が企業もコンサルタントもさまざまな点で理解があり、転職後も長く勤め続けられる可能性が高いということもあるようです。

間違って転職者よりも自社の利益優先のところに登録しまうと、人材不足で困っているブラックな会社を無理やり押し付けられたりするケースもあるので、エージェント選びには十分に注意が必要です。

キャリアコンサルタントとどう付き合うかは、転職成功のための最大ポイント

ADHDの人が転職活動を行う場合、キャリアコンサルタントとしっかりコミュニケーションを取ることは、転職成功のための最大ポイントといえます。

「この人なら信頼できる」と思えるキャリアコンサルタントに出会えたら、その人に何でも相談しながら、二人三脚で転職活動を進めていきましょう。

ADHDは就職・転職が出来ないのかに関するまとめ

今回はADHDで就職ができずに悩んでいる方に向けて、おすすめの方法などを紹介しました。

ADHDの症状があるために、仕事がうまくいかず悩んでいる人は、自分の特性に合った職種に転職することで、人生を大きく好転させられる可能性があります。

今まで転職を繰り返していた人も、自分自身をしっかりと分析することで、自分の良い面を活かせる仕事に転職することができるでしょう。