引き継ぎノートとは?作り方や書き方、例などを解説!

引き継ぎノートとは?作り方や書き方、例などを解説!

転職にあたって退職する会社の引き継ぎは気の重い作業ですが、後任者のために引き継ぎノートは必須と言えます。

そこで今回は引き継ぎノートとはどのような物なのかを紹介しつつ、作り方や作成のメリット、例となるテンプレートなどを紹介していきます。

引き継ぎノートとは?

引き継ぎノートとは、簡単に言うと退職後に後任者へ引き継ぐべき仕事などをまとめているノートです。

引き継ぎノートがなければ退職後に職場へ無用な混乱を招くリスクがあるため、退職日までに引き継ぎノートの作成を求めてくる職場も多いです。

分かりやすく便利な引き継ぎノートの作り方

退職のための引き継ぎノートを作る方法は業種や仕事内容によって様々ですが、以下ではごく一般的な引き継ぎノートの作り方をご紹介しましょう。

まずは自分が担当している仕事を全て書き出す

引き継ぎノートを作る場合、まずは自分が担当している業務、または過去に担当して自分が退職したら誰も知らないような業務を、Wordファイルなどに全て書き出しましょう。

たとえばメーカーの技術職の人であれば、自分が担当した製品の引継ぎが主になりますので、製品ごとに見出しを立てて書いていくと良いでしょう。

次にそれぞれの見出しごとの内容を書く

次に書き出した全ての仕事を、流れで順序立てて見出しを作成していきます。

朝の業務、昼の業務、夕方の業務、週に1回やっている業務といった順序で書いていくと、後任者が見た際もスムーズです。

引き継ぎが必要な内容は会社ごとに違うはずなので、「自分が後任ならこの情報がほしい」という発想で作っていくと、わかりやすい引き継ぎノートができます。

自分以外誰も知らない情報を書いておく

通常の引き継ぎノートはこれで完了なのですが、できれば実際に現場で働いていた自分だからこそわかる情報も書いていきましょう。

自分が退職してしまうと、一見するとさほど重要ではないけれど社内の誰も知らないような情報が、実は業務の遂行で重要だったりします。

大切な顧客の癖のようなレア情報はかなり重宝される

たとえば不動産営業の場合、「お客様のAさんはお話し好きで、時間があると突然当社にお寄りになり、1時間ぐらいお話をして帰られます。定期的に大口の注文をしてくれるお客様なので、常にAさんのお好きなジャスミン茶のペットボトルを冷蔵庫に入れておいて下さい」といった情報です。

日々の業務には関係ないので、一見すれば引き継ぎノートに入れるべき情報ではありませんが、実際の仕事ではかなり役立つ情報です。

他にも「取引先の〇〇さんはストレートに返すと反感を持つので、こう返した方が無難」といった裏情報も引き継ぎで後任者に教えてあげましょう。

引き継ぎノートに書いておくというよりは、おまけ的に付箋に書いて貼っておいても良いかもしれません。

こうしたレア情報があるとないとでは、後任者が引き継いだ後の仕事のしやすさがかなり違ってきます。

業界用語や専門用語には解説を入れる

退職のために引き継ぎノートを作る際、後任が業務未経験である場合も多いので業界用語や専門用語には解説を入れておきましょう。

専門用語が羅列したような引き継ぎノートを書いてしまうと、後任者から「何を書いているかわからない」とブーイングが出る可能性があります。

わかりにくい引き継ぎノートを書いても転職後の自分の立場に響くことはありませんが、退職後の評判が良ければ必ず上司や同僚の耳に入ります。

万が一の時の出戻りがしやすくなりますし、退職後も報酬付きで何らかの仕事を依頼される可能性も出てくるでしょう。

紙でなくパソコンで引き継ぎノートを作ると便利

引き継ぎノートは、その名の通り紙のノートにまとめてもいいのですが、パソコンで作成すると複製や修正がしやすく、退職後も後任の人がスムーズに仕事を進められます。

WordやExcelのファイルを、仕事の種類ごとに分類しておくとより親切でしょう。

また、退職前にプリントアウトをして、特筆する部分は手書きで追記して渡すのもありです。

「教えてあげたいけれど、この情報は上司に見られるとマズい」というような情報は、プリントした後に追記しておけばデータに残らないので安心です。

引き継ぎノートを作っておくメリット

退職後のトラブルを回避できる

引き継ぎノートを作成することで、退職後の余計なトラブルを回避できるのはメリットでしょう。

退職の際に行う業務の引き継ぎは、後任に簡単なメモを渡して口頭で説明するだけでもできます。

しかし、自分ではきちんと伝えたつもりでも、後任の人がそれを全て暗記・把握できるケースは稀です。

自分の説明に対して細かくメモをしたり、わからない部分も自分なりに解釈できる人は良いのですが、新人や未経験だと退職後に「ここが分からないのですが」という電話が入りまくることになるでしょう。

場合によっては転職先にまで、ここの仕事を教えて欲しいという連絡が入ってしまうケースがあります。

貴重な有給消化期間に前の職場に出社することになったり、転職先に迷惑をかけて退職した会社からの心象も悪くなってしまうでしょう。

急な退職の必要が出ても安心

また、転職先から急に「予定より早くうちに来てほしい」と言われた場合も、引き継ぎノートがあれば柔軟に対応できるのもメリットでしょう。

企業が中途採用の募集をかけているのは仕事量に対して人員が不足していたり、退職者が出たことで仕事が回らず、欠員補充を目的としているケースがほとんどです。

そのため、当初は10月1日の入社予定だったのが急に「9月1日から来れますか?」と言われ、一日も早い退職を促されることは珍しくありません。

あらかじめ引き継ぎノートを作ってしっかりと仕事内容をまとめていれば、柔軟に対応して転職先からの評価や印象をアップさせることができるでしょう。

引き継ぎノートの例と書き方

では、以下にいくつかのフォーマットで引き継ぎノートの例や書き方について紹介していきます。

下記から自分の仕事内容的に使いやすそうな書き方を参考に、引き継ぎノートを作ると良いでしょう。

メーカー勤務の引き継ぎノートの例

<商品名〇〇(品番)>2023年〇月〇日~2024年〇月〇日に製作

  1. 全体の製作スケジュール
    まずは全体の製作スケジュールが一目でわかるような図を作成します。
  2. 図面
    製品の図面データを引き継ぎノートに入れられればベストですが、「機密情報なので正式な保管場所が決まっている」という場合もあるでしょう。その場合は「図面は〇〇に保管」と明記し、必要に応じて閲覧方法などを付記します。下記の設計書や仕様書なども同様で、機密情報を引き継ぎノートに載せるかどうかは、会社の規約に従って行いましょう。
  3. 設計書
    図面と同様で、添付できない場合は保管場所や閲覧方法などを明記します。
  4. 仕様書
    図面や設計書と同様の扱いです。
  5. 検査要領書
    検査要領書があれば、それを同じ製品フォルダー内に入れておきます。スキャンをしてWordファイルに貼り付ける方法もありますが、製品ごとのフォルダーを作っておいて、必要なデータはすべてそこに入れておくようにした方が手間を省けるでしょう。「わかりやすく」と思うあまり、作業時間がかかり過ぎてしまうと、引き継ぎノートが完成せずに終わってしまうこともあるので気を付けましょう。
  6. 使用した機材
    製作にあたってどのような機材を使ったかを明記します。その機材が社内にあればどの場所にあり、リースなら入手方法も追記します。
  7. 製作コスト
    製作にかかったコストを明記します。コスト削減のために工夫した点などがあれば、それも付け加えましょう。
  8. 外部の発注先
    製品の製作を外部に発注した場合は、発注先とその連絡先・担当者名を明記します。外部に発注したときに助かったことや困ったことなどがあれば、それも付け加えるとより親切です。
  9. その他の申し送り事項
    「この製品の詳細に関しては、〇〇課の〇〇さんが詳しいので、何かあれば相談に乗ってもらえる」といった裏情報や、「この製品を作った後で、あの機能も入れておけばよかったと反省した」というような感想なども付け加えると、何かのときに役立つ可能性があるでしょう。

メーカーや商品に関わっている場合、上記のような形で製作した製品ごとにまとめて、後任の人がいつでも閲覧できるようにしておくと便利です。

営業職の引き継ぎノートの例

次に営業職の引き継ぎノートの例を紹介していきます。

氏名:山田太郎
退職日:2023年3月31日
後任者:佐藤花子

引き継ぎ内容

①営業チームのメンバーと役割

  • 田中一郎:シニア営業担当。大手企業との契約交渉や新規開拓を担当。
  • 鈴木二郎:ジュニア営業担当。中小企業や個人顧客との関係構築やフォローアップを担当。
  • 佐々木三郎:営業アシスタント。見積書や契約書の作成や管理、データ入力や分析などを担当。

②営業目標と進捗状況

  • 2023年度の営業目標は売上高10億円、利益率20%です。
  • 2023年1月から3月までの売上高は2億円、利益率は18%です。
  • 現在交渉中の案件は5件あり、合計で1億円の見込み収入があります。

③主要な顧客と連絡先

  • ABC社:最大の顧客であり、長期的なパートナーシップを築いています。担当者は山本さん(電話番号:03-1234-5678、メールアドレス:yamamoto@abc.com)です。
  • DEF社:新規開拓した顧客であり、高いポテンシャルがあります。担当者は佐野さん(電話番号:03-2345-6789、メールアドレス:sano@def.com)です。
  • GHI社:中小企業の顧客であり、定期的にリピート注文があります。担当者は鈴木さん(電話番号:03-3456-7890、メールアドレス:suzuki@ghi.com)です。

④引き継ぎ時点で未解決の問題や課題

  • ABC社との契約更新が4月末に迫っていますが、価格交渉が難航しています。ABC社は値下げを要求していますが、我々はコスト増加を理由に値上げを提案しています。
  • DEF社との初回納品が5月初旬に予定されていますが、品質管理部門から不具合が発見されました。修正作業に時間がかかる可能性があります。
  • GHI社からクレームが入りました。商品が破損していたというものです。返品・交換・返金などの対応方法を決める必要があります。

⑤補足

以上が引き継ぎ内容です。

後任者の佐藤さんには、営業チームのメンバーと連携して、引き継ぎ時点で未解決の問題や課題をスムーズに解決していただきたいと思います。

また、営業目標の達成に向けて、積極的に新規開拓や既存顧客のフォローアップを行ってください。

私は退職後もメールや電話で連絡が取れますので、何か分からないことや困ったことがあればお気軽にご相談ください。

この度は私の後任者としてお引き受けいただき、ありがとうございます。

佐藤さんの活躍を心から応援しています。今後ともよろしくお願いします。

山田太郎

教員の引き継ぎノートの例

氏名:佐藤花子
職種:小学校教師
退職日:2023年3月31日
後任者:山田太郎

引き継ぎ内容

①担当クラスと生徒

  • 4年2組:30人の生徒が在籍しています。男子16人、女子14人です。
  • 生徒の特徴や個性、学力や進度、関心や趣味などを記したクラスハンドオーバーシート[^1^][1]を添付します。
  • 特別支援が必要な生徒は2人います。田中一郎くんは自閉症スペクトラム障害(ASD)。
    鈴木二郎くんは注意欠陥多動性障害(ADHD)です。それぞれの個別支援計画(IEP)や対応方法も添付します。

②担当教科と授業計画

  • 担当教科は国語・算数・理科・社会・道徳・英語です。
  • 授業計画や教材は学校の共有フォルダに保存してあります。パスワードは「1234」です。
  • 2023年度のカリキュラムガイドや評価基準も参考にしてください。
  • 授業中に使用するICT機器や教具は教室内のロッカーに収納してあります。
    鍵は机の引き出しに入っています。

③主要な連絡先と連携事項

  • 学校長:山本先生(電話番号:03-1234-5678、メールアドレス:yamamoto@school.com)
  • 副校長:佐野先生(電話番号:03-2345-6789、メールアドレス:sano@school.com)
  • 学年主任:佐々木先生(電話番号:03-3456-7890、メールアドレス:sasaki@school.com)
  • 担任助手:田中さん(電話番号:03-4567-8901、メールアドレス:tanaka@school.com)
  • 保健室:鈴木さん(電話番号:03-5678-9012、メールアドレス:suzuki@school.com)
  • 生徒指導部:佐藤さん(電話番号:03-6789-0123、メールアドレス:satou@school.com)
  • 学校事務員:山田さん(電話番号:03-7890-1234、メールアドレス:yamada@school.com)
  • PTA会長:佐々木さん(電話番号:090-1234-5678、メールアドレス:sasaki@pta.com)

④引き継ぎ時点で未解決の問題や課題

  • 4月に予定されている修学旅行の準備がまだ完了していません。
    バスや宿泊施設の予約は済んでいますが、行程や見学先の確認や連絡が必要です。
  • 5月に行われる学力テストの対策を考える必要があります。
    過去の問題や模試の結果を分析して、苦手な分野や単元を重点的に教えてください。
  • 6月に開催される運動会の役割分担や練習計画を立てる必要があります。
    クラス対抗リレーや玉入れなどの競技に参加する生徒の選抜や指導を行ってください。

以上が引き継ぎ内容です。

後任者の山田さんにはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

引き継ぎノートは手書きじゃないとダメ?

ネットを見ると手書きでの引き継ぎノートの作成を推奨している記事がありますが、結論を言うと手書きじゃないとダメということはありません。

むしろ前述したようにExcelやWordを用いた方が追記や修正、複製が柔軟にできるので便利です。

手書きのメリットと言えばあまり公にしたくない情報が、データとして残らない点でしょう。

アプリで作るのもおすすめ

WordやExcelでなく、スマートフォンのメモ帳アプリで引き継ぎノートを作成するのもおすすめです。

スマホならどこでも、ちょっとした空き時間でも触れるので、腰を据えて作業をしなくてはいけないパソコンよりも引き継ぎノートが作りやすいです。

大体のメモ帳アプリには印刷機能や共有機能が備わっているので、紙とデータの両方で後任者へ引き継ぎを行うこともできます。

引き継ぎノートの作り方や書き方まとめ

今回は退職時に求められることが多い、引き継ぎノートの作り方や書き方などを紹介しました。

退職時は転職先のことに意識が集中してしまいがちですが、退職する時の態度を会社の人たちは忘れません。

雑な引き継ぎで後任者が困るようでは退職後に電話がかかりまくる事態になりますし、酷い社員だったと悪印象が残り続けます。

しかし転職先が同業界であったりすると、いつどこで退職した会社の人たちと関わりを持つか分かりませんので、引き継ぎノートを丁寧に作って退職しましょう。