年俸制と月給制のメリットとデメリットを比較!どちらが良い?
年俸制とは?
「年俸制」とは、労働時間に関係なく1年単位で決定された給与を支給する報酬制度です。
年俸の金額は原則として、成果や業績に応じて企業との交渉で決定します。
日本では主に下記3種類の内、いずれかの年俸制を採用している企業が多いです。
- 年俸を単純に12分割して毎月支給
- 年俸を12分割した金額の他に賞与や手当を支給
- 年俸を16分割して12ヶ月分を毎月の給与に、4ヶ月分を賞与として支給
日本の労働基準法で毎月給与を支払う必要があるため、年俸制と聞いてイメージする一括で1年間の報酬が支払われるということはありません。
月給制とは?
「月給制」とは、日本では大半の企業が採用している、毎月に基本給が支払われる報酬体系です。
また、基本給以外にも残業手当や家族手当・住宅手当などの手当が追加で支払われますので、月給制尾場合は年間に支給される給与の額が決まっていません。
実績に応じて大幅に報酬額が変わる年俸制と異なり、月給制では成果よりも社員の勤務年数や年齢・役職に応じて金額が少しずつ上がっていくことが多いです。
年俸制のメリット
では年俸制と月給制のそれぞれのメリットを紹介していきます。
まずは年俸制のメリットです。
実力次第で大幅な年俸アップが期待できる
年俸制の最大のメリットですが、やはり実績次第でグンと年収が跳ね上がる点でしょう。
業種によってはスキル次第で年収2,000万円も狙えるので、社員としては大きなやりがいを感じられます。
もっとも、日本の年俸制は海外のように報酬が乱高下するケースは多くはありません。
それでもどれだけ成果を出しても給与が増えず、年齢や勤務年数で全てが決まる月給制に不満があり、「自分の実力を正当に評価してほしい」という気持ちが強い人は、年俸制の企業に転職することでモチベーションを高く持って働けます。
無駄な残業時間が減る
年俸制は原則として残業が無い前提で報酬が組まれているので、無駄な残業時間が減るのもメリットでしょう。
日本は基本給が低いせいで残業代で稼がなければ生活できない人も多いのですが、年俸制の企業ではお金にならない無駄な残業をする社員が少ないです。
無報酬でも残業がやりたい!という人は勝手に残業をしても良いですが、会社からは評価されません。
事の結果さえ出せば退社時間に縛られない会社も多いので、残業ゼロの運動などが進む日本では企業にとっても社員にとっても、いい傾向といえるでしょう。
年間の支払金額が決まっているので計画を立てやすい
年俸制は1年間の報酬額が決まっているので、少なくとも1年間は分割された報酬が支払われるので、家や車の購入などの計画を立てやすいというメリットがあります。
月給制の場合は会社の業績が悪かったり、ノルマを達成できなかった場合は前月より給料が減ることも珍しくありません。
月給制は安定感があるのがメリットと言われていますが、いつ給与やボーナスがカットされるかも分からない企業に勤めるなら、年俸制の方が安定しているともいえます。
月給制のメリット
慣れ親しんだ給与体系なので受け入れやすい
月給制は大半の人が日本企業で慣れ親しんできた給与体系なので、受け入れやすいのはメリットでしょう。
逆に年俸制は今までの日本人には馴染みのないシステムなので、人によってはいざ働き始めると不満を感じることがあります。
安定した生活を送ることができる
月給制は年俸制のように1年毎に収入が大きく変わることが無く、安定した生活を送ることができるのもメリットです。
年俸制のように魅力的な給与額を定時されることはありませんが、会社が傾かない限りは安定した収入が得られるでしょう。
ボーナスが出る
月給制は基本給がさほど高くない分、会社の業績に応じてボーナス(賞与)が支給されるのもメリットです。
生活のベースは毎月のお給料で賄えば、ボーナスは臨時収入として好きに使うことができるでしょう。
年俸制の場合はボーナスが出ない企業も多いので、「ボーナスが出たら旅行に行こう」「車のローンの頭金にしよう」といった夢が持てるのは月給制ならではの嬉しさです。
一応年俸制でもボーナスを導入している企業はありますが、最初に年俸を14分割、16分割してボーナス分を確保しているに過ぎないので、月給制のように「今年のボーナスはいくら出るのだろう?」といったワクワク感はありません。
残業代や休日出勤手当がでる
年俸制は残業や休日出勤をしても基本的に手当が出ませんが、月給制は残業をすれば残業代が出ますし、休日に出勤すれば休日出勤手当が出るのもメリットです。
正確に言うと年俸制でも残業があれば支給をする義務があるのですが、年俸制では残業は自己責任で発生しているに過ぎないとして、支給しない企業が少なくないのが実情です。
大変な思いをした分、月給制であれば様々な手当を受け取ることができるので、「先月はメチャクチャ忙しかったから、今月はそのお金でパ~ッとやろう」といったストレス発散もできます。
特に日本では残業が発生する企業が多いので、年俸制と違って残業代が出る月給制の方が得と考える人も少なくないでしょう。
住宅手当や家族手当などの各種手当が出る
月給制を導入している企業の多くは「住宅手当」や「家族手当」などの各種手当を設けているのもメリットでしょう。
年俸制は提示している報酬に手当も全て含んでいる前提なので、実は見た目の年収は低い月給制の方が、手当を含めると最終的に受け取れる金額が多い場合もあります。
例えば住宅手当は、平成27年就労条件総合調査で平均支給額は17,282円、従業員1,000人以上の大企業であれば21,671円ほど支給されています。
年間にすると20万円以上の支給されている計算になるので、月給制で家賃手当のある企業は額面年収より実際の収入は20万以上多いといえます。
そのため、家賃手当や通勤手当、食事補助、燃料手当といった様々な手当を含めると、むしろ年俸制の方が年収が低くなる可能性すらあるでしょう。
年俸制のデメリット
ここからは年俸制と月給制のデメリットを紹介していきます。
まずは年俸制のデメリットから紹介します。
1年後に年収が大幅に減ることがある
年俸制の最大のデメリットは、やはり1年後に年収が大幅に下がる場合がある点でしょう。
月給制は会社の業績不振といった要素がなければ、勤務年数に応じて自動的に給与が上がっていくのが通常です。
ところが年俸制は毎年1回報酬額が見直されるので、前年の業績が悪いと突然大幅な減収を余儀なくされることがあります。
自己責任とはいえ前年と比べて年俸があまりに低くなってしまうと、仕事のやる気が無くなってしまうでしょう。
安定した生活が保障されない
年俸制は業績に応じて毎年報酬が変わるので、一気に年収が上がる可能性がある反面、月給制のような安定した生活は保障されないのもデメリットです。
年度によって年収が大きく変わると、毎月の家計に使える金額が毎年変わってしまうので、安定した生活が保障されません。
特に長期的な支払いが発生する住宅ローンや車のローンを組んでいる方は、当初は無理なく払えていても急に年収が落ちた際に家計が立ち行かなくなるリスクがあるでしょう。
そのため、成果を出し続ける自信がない人は精神的に安定せず、サバイバルをするような気持ちで働くことになります。
勤務年数や年齢の高い社員は不満を感じる場合がある
年俸制は、勤務年数や年齢の高い社員が不満に感じる場合があるのもデメリットでしょう。
特に途中から年俸制を導入する企業の場合、勤務年数が20年を超えている役職付きの社員が、2年目で結果を出している社員より年収が低くなる事があり、不満に繋がりやすいです。
月給制は良くも悪くも成績より年齢や勤務年数・業務態度を評価しているので、月給制に馴染んでいる社員からすれば面白くないのでしょう。
サービス残業が増える
年俸制を採用している企業は残業代が無いことが大半なので、仕事が多い場合はサービス残業が発生するのも年俸制のデメリットでしょう。
前述したように本来であれば年俸制であっても残業代を支払う義務があるのですが、実際は年俸制であるのを良いことに、残業代を一切支給しない企業が少なくありません。
どう頑張っても定時で終わらない仕事量を与えられてしまった場合は、残業代の関係で月給制の方がむしろ稼げたような事態にもなりかねないでしょう。
月給制のデメリット
実績を上げても報酬アップが望めない
インセンティブ制度を設けている企業でない限り、どれだけ成果を出しても年収が上がらないのは月給制の最大のデメリットでしょう。
何十年も前から年功序列制度の欠点として言われてきたことですが、月給制は成果に関わらず勤務年数に応じてコツコツと階段を上るように金額が上がっていくため、成果を出せる実力のある人ほど不満が募ります。
そのため、自分の実力を正当に評価してもらいたいと考える優秀な人材ほど、年俸制を導入している外資系に流出してしまうといった問題が起きています。
やる気のない社員が生まれる
月給制を導入していると、会社が傾かない限り結果を出さなくても一定の年収が保障されるため、やる気のない社員が多くなるのもデメリットでしょう。
特に大企業ほど、会社に貢献していないにもかかわらず、会社に長くいるというだけで高給を保障されている人が多いです。
働いても働かなくても高いお給料がもらえるのであれば、自然と働かなくなってしまうのが、人間というものかもしれません。
やる気のない社員を雇うのは企業としても損失ですが、それ以上に、「座っているだけの社員が頑張っている自分よりも高給をもらっている」という事実が人材の流出を加速させてしまうデメリットもあります。
会社の業績の変化に弱い
年俸制は1年間の報酬額が固定なので、途中で会社の業績が悪化しても減給がされませんが、月給制は会社の経営状況が悪化すれば容赦なく来月からの給料が減るのもデメリットでしょう。
月給制は安定した生活が送れるというメリットは、あくまでも大企業や倒産の心配がない会社に限ります。
経営基盤が貧弱な中小企業の場合、月給制は何の心の準備もなく減給になって生活に困窮するリスクが考えられます。
日本の年俸制と海外の年俸制の違い
日本の年俸制は、海外の年俸制を若干アレンジした形になっています。
そこで次に本家本元の海外と日本の年俸制の違いについて紹介していきます。
基本的に残業代やボーナスが存在しない
日本では年俸制であっても、支払われるかはともかくとして原則は残業代が存在しています。
一方でアメリカの年俸制では契約した金額を単純に12等分したものが毎月支払われるのですが、残業代もなければボーナスもありません。
これは労働時間でなく、「どれだけの成果を出したか」で報酬が決まるからです。
報酬の支払いが柔軟
日本では年俸制であっても毎月1回、決められた日に給料が振り込まれます。
一方で海外の年俸制は本人が希望すれば1ヶ月に2回、2週間に1回といったタイミングで給与を支払ってもらうことができます。
交通費も自分持ち
日本では年俸制であっても自宅から会社までの交通費を受け取っていることが多いですが、アメリカは自分持ちであることが多いです。
マイカー通勤した場合、ガソリン代も車のメンテナンス費用も基本的に自分持ちです。
車をよく使う営業マンの中には交渉でメンテナンス費用を受け取っている人もいるようですが、年俸制の場合は移動手段に関して手当てをもらうことはほとんどありません。
あくまでも「労働力を提供して対価を受け取る」という意識に徹した、アメリカらしい考え方といえるでしょう。
事務系や作業員は1時間あたり50%増しの残業代が支払われる
海外の年俸制であっても、一般事務職や作業員などのように時間で換算できるポジション(ノン・エグゼンプト)の人は、労働法に従って1週間に40時間を超える労働をした場合は、残業手当として1時間あたり50%増しの金額が支払われるのも日本との違いでしょう。
ただし、ノン・エグゼンプト労働者が残業をすることは実際にはあまりなく、労働時間内できっちり働き、私生活を充実させている人が多いようです。
「残業代のためにあくせく働かなくちゃ」と思う日本人とは、時間の使い方に対する意識が違うようです。
給与に対する考え方も違う
日本では、仕事の成果だけでなく、残業をいとわずに働く会社への忠誠心のようなものが評価される傾向があります。
結果ではなく、そこに至る過程でどれだけがんばったかが、評価の対象になるのです。
ところが、アメリカでは“会社への忠誠心”などは一切評価の対象にはなりません。
結果がすべてであり、また結果さえ出せば次年度に大幅な年俸アップもあります。
日本も最近はこうした考え方にシフトしつつあり、年俸制を導入する企業が増えてきました。
もしも年俸制を導入している企業への転職を考えるなら、ただ頑張るだけでなく自分がしっかり結果を出せるかどうかも考える必要があるでしょう。
年俸制と月給制はどちらが良い?
自分の状況や考え方に合った給与体系を選ぶのがベスト
結論から言うと、月給制と年俸制は単に仕組みの違いなので一概にどちらが良いか、お得かを断定することはできません。
年俸制の方がもらえる額がはっきりとわかるので気持ち的にはスッキリとしますが、残業代や住宅手当がない場合があることを考えると、日本では合わない人も多いでしょう。
年俸700万の企業よりも、年収600万の企業の方が諸々の手当を含めると稼げるということも珍しくありません。
そのため、額面の報酬だけでなく、働き方や将来、自分の求めているものなどを加味した上で、合っている給与体系の選んだ方が良いでしょう。
安定を求める人は月給制が無難
ただ敢えてどちらが良いのかを紹介すると、仕事に対して安定感を求める人は経営基盤の安定した企業で月給制での雇用がおすすめでしょう。
経営が安定している限り、不祥事でも起こさなければ月給制なら収入が安定するからです。
手当が不要で能力がある人は年俸制がおすすめ
自分の能力に自信があり、余計な手当も不要という人は年俸制がおすすめでしょう。
たとえば独身で生きるつもりなら月給制の企業の家族手当は不要ですし、実家住みなら住宅手当も出ないので、年俸制の企業に就職しても問題ありません。
結果さえ出せれば報酬も月給制の企業では考えられない勢いでアップしていくので、20代で年収1,000万プレイヤーを目指すことも十分に可能です。
年俸制と月給制のメリットやどちらが良いかまとめ
今回は年俸制と月給制それぞれのメリットや、どちらがおすすめかをお話ししてきました。
日本も少しずつ年俸制採用する企業が増えていますし、反対に不景気で住宅手当や家族手当を支給する企業は少しずつ減っています。
そのため、「住宅手当や家族手当が出るから月給制で良かった」と喜んでいても、ある日突然手当が無くなる可能性は低くないでしょう。
こうした時代背景も踏まえて、10年後・20年後の将来を見据えてどちらの給与体系がいいのかを考える必要があるでしょう。